外国貨物を、関税を納めないまま別の保税地域へ運びたいことがあります。これを認めるのが保税運送。さらに、事故や難破で緊急に運ぶ必要が生じたときの特例も用意されています。二つの運送を、承認と期間という視点で見ていきましょう。
せんせぇ、外国貨物を別の場所へ運ぶとき、いちいち先に関税を払わないといけないんですかぁ?
それだと大変そうですぅ。
いいえ、ねむちゃん、そこにちゃんと仕組みがあるの。保税運送といって、外国貨物を外国貨物のまま、関税を納めずに運べるのよ。
港に着いた貨物を内陸の倉庫へ移す、といった場面で使うわ。
運ぶたびに納税していたら物流が止まってしまうものね。
つまり、身分を外国貨物のままにして運ぶために、税関長の承認を受ける、という理解で合っていますか?
勝手に運べるわけではないのですね。
その通りよ、さやちゃん。
原則として税関長の承認を受けて、保税地域どうしの間などを運送するの。
承認なしに外国貨物を勝手に動かすことはできないわ。
ここでも『承認』というキーワードが効いてくるの。
運ぶのに期限とかあるの?
のんびり寄り道しながら運んでもいいわけ?
いい着眼ね、アキちゃん。
運送には期間が指定されるの。
決められた期間内に、到着地の税関へ貨物を届けて確認を受ける必要があるわ。
だらだら運んだり、途中で行方不明になったりしては困るからよ。
もし、その指定された期間内に到着しなかった場合は、どうなるのですか?
貨物が届かないと、税関としても困るはずです。
鋭い質問ね。
原則として、その貨物について関税が徴収されることになるの。
運送の承認は『きちんと期間内に届ける』ことが前提だから、それが守られなければ課税で担保する、という仕組みなのよ。
だから運送は期間管理がとても大事なの。
じゃあ『難破貨物』ってのは何?
船が難破しちゃったやつのこと?
なんか物騒な名前だね。
そうなの、アキちゃん。
事故や難破で本邦に流れ着いた外国貨物などを運ぶのが難破貨物等の運送よ。
想定外の事態で生じた貨物を、緊急に動かすための特例的な扱いなの。
ふつうの計画的な輸送とは、そもそものきっかけが違うわ。
うぅ〜ん、ふつうの保税運送と、この難破貨物等の運送って、どこが違うんですかぁ?
どっちも運ぶのは同じですけどぉ。
きっかけが違うのよ、ねむちゃん。
通常の保税運送は、あらかじめ計画して運ぶもの。
難破貨物等の運送は、事故など不測の事態で生じた貨物を運ぶもの。
生まれる経緯が正反対なの。
ただし、どちらも税関長の承認を受ける点は共通しているわ。
ここは共通点として押さえて。
なお、AEOの特定保税運送者は、個々の保税運送について承認を要しない特例がありますよね。
信頼された事業者への優遇、という前回までの流れとつながります。
見事につないだわね、さやちゃん。
原則は承認を受けて期間内に届ける、AEOの特定保税運送者は個々の承認が要らない。
この骨格で押さえておけば十分よ。
信頼の積み重ねが手続を軽くする、というAEOの考え方がここでも生きているの。
せんせぇ、保税運送の途中で、もし貨物が事故でなくなっちゃったら、どうなるんですかぁ?
運んでいる最中の事故ですぅ。
いい問いね、ねむちゃん。
運送の途中で外国貨物が亡失すれば、原則としてその関税が徴収されることになるの。
だから運送人はきちんと届ける責任を負うのよ。
承認を受けて運ぶ以上、途中で消えては困るからね。
つまり、承認・期間・そして無事に届けること、この三つがそろって保税運送は完結する、という理解でよいですね。
運びっぱなしではいけない、と。
その通りよ、さやちゃん。
承認を受け、期間内に、確実に到着地へ。
この三点がそろって初めて課税を保留したまま運べるの。
責任と自由は裏表、と覚えておいてね。
承認・期間・無事に到着の三点!
運ぶのにも責任がついてくるんだね。
保税運送は承認+期間内に到着、難破は緊急の特例、でも承認はどっちも必要!
よし、覚えたっ。
確認クイズ
保税運送に関する記述として最も適切なものはどれか。
- 外国貨物を運送する前に、必ずその関税を納付しなければならない
- 外国貨物を外国貨物のまま、税関長の承認を受けて保税地域相互間等で運送できる
- 運送に期間の指定はなく、いつ到着地に届いてもよい
- 難破貨物等の運送では、税関長の承認は不要である
こたえを見る
正解: 2. 外国貨物を外国貨物のまま、税関長の承認を受けて保税地域相互間等で運送できる
正解は選択肢2。保税運送は外国貨物を外国貨物のまま、税関長の承認を受けて運送する制度です。運送前に納税する必要はなく(選択肢1は誤り)、運送には期間が指定され(選択肢3は誤り)、難破貨物等の運送も税関長の承認を受けて行います(選択肢4は誤り)。